“トラディショナル&レトロ”な世界観を味わう、映画『繕い裁つ人』

プチプラコーディネートを紹介する人気ブログが書籍化されたり、オフィスファッションを提案する女性ファッション誌に、ファストファッションのアイテムを取り入れたコーディネートが掲載されるなど、日本人のファッションは時代の流れとともに変わってきました。そんな中、“トラディショナル&レトロ”な独特の世界観を表現した中谷美紀さん主演の映画『繕い裁つ人』が公開されます。

 (c)2015 池辺葵/講談社・「繕い裁つ人」製作委員会

(c)2015 池辺葵/講談社・「繕い裁つ人」製作委員会

原作は、池辺葵さんの大人気コミック。『しあわせのパン』『ぶどうのなみだ』など、日本はもちろん世界でも高く評価されている三島有紀子監督が実写化に挑みました。

 (c)2015 池辺葵/講談社・「繕い裁つ人」製作委員会

(c)2015 池辺葵/講談社・「繕い裁つ人」製作委員会

物語の舞台は、どこか懐かしい昭和の香りが感じられる神戸の街。「南洋裁店」という小さな看板が掛けた古びた洋風の一軒家の店主、南市江が主人公です。

ブランド化と量産化、相反するベクトルで揺れ動くファッションビジネス

 (c)2015 池辺葵/講談社・「繕い裁つ人」製作委員会

(c)2015 池辺葵/講談社・「繕い裁つ人」製作委員会

市江が作る服はすべて昔ながらの職人スタイルを貫く手作りの一点もの。神戸のデパートに勤める藤井は、市江にブランド化の話を持ち掛けるところから、物語が始まります。ブランドとしての価値が高まると量産化が始まるというのは、ココ・シャネルやマドレーヌ・ヴィオネなど、20世紀を代表するファッションデザイナーの例にもあるとおり。ビジネスの成長とブランド価値は必ずしも比例しないのです。

 (c)2015 池辺葵/講談社・「繕い裁つ人」製作委員会

(c)2015 池辺葵/講談社・「繕い裁つ人」製作委員会

ブランド化の話に興味を示さない市江のことを、藤井はまるで“頑固じじい”のようだと評します。一代目である祖母が作った服の仕立て直しとサイズ直し、あとは先代のデザインを流用した新作を少しだけ。南洋裁店の服は、世界で一着だけの一生もの。藤井は市江の価値観に反発しながらも、彼女の世界観に引き込まれていきます。

市江のパーソナリティを映し出す深いブルー

物静かな市江ですが、時折、ドキッとするようなセリフを吐くことがあります。

「自分の美しさを自覚している人に、私の服は必要ないわ」
「夢見るための服をつくっているんですもの、生活感出してたまるもんですか」

中谷美紀さんは、市江のことを“しつけの行き届いた野犬”のようなと表現していますが、おしゃれには、市江のような覚悟や態度は必要なのかもしれません。

 (c)2015 池辺葵/講談社・「繕い裁つ人」製作委員会

(c)2015 池辺葵/講談社・「繕い裁つ人」製作委員会

本作は、職人の生き方を描くと同時に一着の洋服を大切に着るという奥深さを伝えることをテーマとしています。数多くの舞台や映画の衣装デザイナーとして活躍する伊藤佐智子氏が、本作に登場する半分以上の衣装をデザインしています。

 (c)2015 池辺葵/講談社・「繕い裁つ人」製作委員会

(c)2015 池辺葵/講談社・「繕い裁つ人」製作委員会

キーワードは、“トラディショナル&レトロ”。深く鮮やかなブルーの色がとても印象的な市江の仕事服は、市江のキャラクターを表現するために、布を染めてつくられたもの。市江は先代の祖母が遺した洋裁店にとらわれて生きている女性です。そのとらわれ感や頑固な職人気質を表現するために、くるぶしが隠れるか隠れないかほどの長さにデザインされています。

服装によって変わる、人と人の距離感

本作のもう一人の主役は“オーダーメイドの洋服”です。服装は非言語コミュニケーションのひとつ。服装によって、人と人の関係は良くも悪くも変容していきます。市江は、「着る人の顔が見えないなんて」と、藤井のブランド化の提案に毅然とした態度をとります。南洋裁店の服は饒舌に着る人のことを物語り、温かさ、厳しさ、時には切なさをも醸し出します。服装を大切にすることは、人と人との関係性や距離感をデザインすることにつながっていくのではないでしょうか。

 (c)2015 池辺葵/講談社・「繕い裁つ人」製作委員会

(c)2015 池辺葵/講談社・「繕い裁つ人」製作委員会

タイトル:『繕い裁つ人』
公式サイト:http://tsukuroi.gaga.ne.jp/
公開情報:1月31日(土)より全国ロードショー
クレジット: (c)2015 池辺葵/講談社・「繕い裁つ人」製作委員会
配給:ギャガ

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