形あるものには色がある、『シンプルなかたち展 : 美はどこからくるのか』

形あるものには色がある、『シンプルなかたち展 : 美はどこからくるのか』

フランスのパリ4区に位置するポンピドゥー・センターは、国立近代美術館、産業創造センター、音響音楽研究所、公共図書館が入る総合文化施設。1977年、現代美術や現代音楽、ダンス、映画など、多様化するコンテンポラリー・アートのための拠点として開館しました。レンゾ・ピアノとリチャード・ロジャースによる建築は前衛的で、開館当時は賛否両論あったと言われます。
 

2010年、フランス北東部ロレーヌ地方の首都であるメスに、分館としてポンピドゥー・センター・メスが開館。ポンピドゥー・センターが培ってきた経験、知見、国際的な評価を引き継ぐ、近現代アートに特化した文化複合施設です。ポンピドゥー・センター・メスも、坂茂とジャン・ドゥ・ガスティーヌの日仏共同チームによる、斬新な建築が話題を集めました。
 

展覧会『シンプルなかたち展 : 美はどこからくるのか』は、森美術館とポンピドゥー・センター・メスとエルメス財団による共同企画。古今東西の「シンプルなかたち」約130点が9つのセクションで構成されています。

平面と立体、形態と構造

19世紀から20世紀にかけて、ヨーロッパでは数学、機械工学、生物学、地質学や考古学の探求の中で「シンプルなかたち」の美学が再認識され、工業製品や建築のデザインなどに多大な影響を与えました。近現代美術の名作にも、そのような影響を見ることができます。



展示風景:「シンプルなかたち展:美はどこからくるのか」(2015年4月25日~7月5日)
森美術館、東京
撮影:古川裕也
画像提供:森美術館、東京

 

例えば、写真右に展示されている、アンリ・マティスの《「ジャズ」9 形態》。晩年、手が不自由になったマティスは、切り紙絵の手法で制作を続けました。本作は、1947年にステンシルで印刷したものです。
 

写真左は、2004年に発表された、カールステン・ニコライの《アンチ》。光吸収塗料で仕上げたポリプロピレン製の軽量構造体は、高さ3メートルほど。内部に、サウンドモジュール、テルミン、トランスデューサー、アンプなどが組み込まれています。この作品のあるポイントに手を近づけると、人体の磁気を感知して、低い音を響かせ振動します。

真理を探究した、禅画の形

このような単純で美しい「シンプルなかたち」は、自然の中や、世界各国のプリミティブアート、民俗芸術、伝統文化の中にも、数多く見出すことができます。日本においては、工芸品や茶道具、仏像や禅画などに同様の美学が体現されています。



仙厓
《円相図》
江戸時代後期(19世紀)
紙本墨画
43.2 × 56.2 cm
所蔵:九州大学文学部

 

禅宗では単純な円形をもって、仏性、実相など絶対の真理を表し、これを描くことよって、僧たちは自らの悟りの境地を示しました。江戸時代後期の禅僧で、博多聖福寺の第123世住持であった仙厓は、ユーモアに満ちた作品で知られます。仙厓は円相を餅に見立て、そんなものは茶菓子にして食べてしまえと言い、見る人を笑いに誘います。絶対の真理や自らの悟りにも拘泥しない仙厓のスケールの大きさは、現代に生きる私たちに気づきをうながしてくれるのではないでしょうか。

空間と光を体験する、インスタレーション

 

場所や空間全体を作品として体験させるインスタレーションは、1970年代以降、数多く制作されるようになりました。空間全体が作品であり、展覧会期が終われば撤去されてしまうため、その時その場に居合わせなければ、作品化された空間を「体験」することはできません。写真や映像で追体験することはできますが、作品そのものを体験することとは違っています。



オラファー・エリアソン
《丸い虹》
アクリルプリズム、鋼、アルミニウム、モーター、三脚、HMIランプ
サイズ可変
Courtesy of neugerriemschneider, Berlin; Tanya Bonakdar Gallery, New York
展示風景:森美術館「シンプルなかたち展:美はどこからくるのか」2015年
撮影:木奥恵三
画像提供:森美術館、東京

 

オラファー・エリアソンは、光を使ったインスターレションに定評があります。《丸い虹》は、プリズムや金属の輪を使って、美しい光の輪(虹)を生み出します。光の輪は刻々と変化し、悠久の宇宙の営みへと誘ってくれるようです。

写真とは、形を与える行為



展示風景:「シンプルなかたち展:美はどこからくるのか」(2015年4月25日~7月5日)
森美術館、東京
撮影:木奥恵三
画像提供:森美術館、東京

 

写真左に展示されているのは、杉本博司の《スペリオール湖、カスケード川》。世界中の『海景』を撮影した一連の作品は、水平線で二分された海と空がフレームの中に収められています。写真を撮るという行為は、目の前に広がる光景を切り取り、形に与えることなのだと気づかせてくれます。
 

「シンプルなかたち」というテーマで構成された本展は、地理的なひろがりと歴史的なつながりを示しながら、時空を越えた普遍的な美を描き出しています。形あるものには色がある。さまざまな色と形の関係を通して、古今東西の美に触れてみてはいかがでしょうか。
 
 
 

シンプルなかたち展:美はどこからくるのか
会期:2015年4月25日(土)-7月5日(日)
会場:森美術館(六本木ヒルズ森タワー53階)
主催:森美術館、ポンピドゥー・センター・メス
URL:http://www.mori.art.museum/contents/simple_forms/

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