モノクロームと紅が誘う、山口小夜子の物語

モノクロームと紅が誘う、山口小夜子の物語

4月11日から東京都現代美術館で、『山口小夜子 未来を着る人』展が開催されています。おかっぱの黒髪や切れ長の目元という日本人形のようなビジュアルの山口小夜子は、1972年にアジア系ファッションモデルとして『パリ・コレクション』に参加して以来、圧倒的な存在感で瞬く間にトップモデルとなりました。同じ頃、パリやニューヨークのコレクションに進出したファッションデザイナー、三宅一生や高田賢三らとともに国際的に高く評価され、1974年にはニューズウィーク誌で「世界の4人の新しいトップモデル」として紹介されました。


「三宅一生『馬の手綱』を着た小夜子」 撮影:横須賀功光 1975年

 

私が山口小夜子の存在を知ったのは、資生堂のCMやポスターでした。まるで芸術品のようなビジュアルは、表層の美しさだけでなく、内面から醸し出される美意識から生まれた表現の世界。日本人の美しさを極めた独特の世界観は、唯一無二の存在感を放っていました。


撮影:横木安良夫 1977年

 

1949年生まれで、資生堂の専属モデルを務めた1973年から1986年は、24歳から37歳。その後もテレビなどで拝見する機会がありましたが、いくつになっても年齢不詳のまま。穏やかな語り口と表現者としての佇まいが印象に残っています。

山口小夜子を象徴する3つの色


「資生堂 舞」 ポスター 撮影:横須賀功光 AD:中村誠 1978年

 

さて、展覧会「山口小夜子 未来を着る人」は、序章を含む5つのセクションで構成されています。前半は主に、トップモデルとしての活動と専属モデルを務めた資生堂の作品が展示されています。黒(黒髪、アイラインの黒)、白(白磁のような滑らかな肌の色)、赤(紅の色)の3色を効果的に使って、山口小夜子という稀有な存在を体感できるように構成されています。モノクロの写真が醸し出す静謐な世界とコントラストを描くように、アートディレクターの中村誠が手掛けた香水「すずろ」や「京紅」のポスターを並べた真紅の空間が、艶やかな美の世界へと誘ってくれるようです。

「ウェアリスト(着る人)」としての山口小夜子


生西康典+掛川康典 「H.I.S. Landscape」 (「六本木クロッシング」出品作品、森美術館、2004年)

 

展覧会の後半は、世界のモードを席巻したトップモデルの枠を超えて、クリエーター、パフォーマーとして活躍した山口小夜子に焦点を当てています。山口小夜子は「ウェアリスト(着る人)」と名乗り、他分野のアーティストたちとのコラボレーションに取り組みました。「着る」というテーマに軸足を置くことによって、演劇や映画、ダンスパフォーマンスやオペラなど、さまざまなジャンルにおいても圧倒的な存在感を放ちました。


撮影:下村一喜 2005年

 

本展は、彼女の周囲で活動した表現者たちが制作した、小夜子に捧げる新作インスタレーションも見どころのひとつ。音、映像、写真、ファッションなど多彩な方法で表現される作品群は、数多くの表現者たちに多大な影響を与えた山口小夜子の活動の軌跡そのものです。宇川直宏や山川冬樹、エキソニモなど、現在のシーンにおいて大きな影響力を持つ先端的なアーティストたちの作品は、2007年にピリオドを打った山口小夜子の物語の続きを見せてくれるようです。

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    展覧会名:山口小夜子 未来を着る人
    会 期:2015年4月11日-6月28日
    開館時間:10:00-18:00(入場は17:30まで)
    会 場:東京都現代美術館企画展示室地下2階
    休 館 日:月曜日(ただし、5月4日は開館)、5月7日(木)
    主 催:公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都現代美術館 読売新聞社、美術館連絡協議会
    観 覧 料:一般1,200円/大学生・65歳以上900円/ 中高生600円

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