『カリスマ』(佐野眞一)(新潮社)(筑摩書房)

『カリスマ』(佐野眞一)(新潮社)(筑摩書房)

最近の小説は「小さい物語」ばかりで「大きな物語」が少ないように思います。
 
すみません、小説家でもなく評論家でもないのに偉そうで。
 
もちろん、「小さい」「大きい」は良い悪いとは全く別の視点です。
 
小さい物語でも素晴らしいものはあるし、大きな物語でもただ退屈なものもある。
 
閑話休題、「大きな物語」を読みたくなると、決まって僕は書店のノンフィクションのコーナーへ向かいます。
 
ノンフィクションと聞くと、あまり読んだことがない方は「本当にあった話?」くらいに思われるでしょうが、実は歴史小説と変わらないエンタメ性に加え、余計な「形容詞」「副詞」がない硬質でシンプルな物言いに魅了されます。
 
しかも、ある時代・事件・個人をテーマにするため物語が「大きい」のです。

 


カリスマ―中内功とダイエーの「戦後」〈上〉 (新潮文庫)

 

佐野眞一さんはノンフィクション界の大御所ですが、中でもこの『カリスマ』は関西出身の僕にはとても身近に感じるノンフィクションでした。幼い頃によく行ったダイエーの、店舗の巨大さ、印象的なオレンジのロゴは今も記憶にあります。
 
繁栄も終焉もリアルタイムだったせいか、読めば改めて切なさを感じる一方、身近な出来事や企業が日本の戦後史でどう位置しているかも理解できます。また、中内㓛という1人の人間の輪郭や才能も余さず描写されていて、まさにカリスマの評伝としても面白い。
 
流通業がチカラを取り戻し、メーカーを凌ぐ地位を占める今こそ、再読の価値があるのではないでしょうか。

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