「ものづくり」と「ものがたり」が織りなす、シャネルの黒

1969年、アメリカの文化人類学者ブレント・バーリンと言語学者ポール・ケイは、基本色彩語 (basic color terms)に関する研究成果を発表しました。基本色彩語とは、あらゆる色をいくつかの色名で把握するための言葉のこと。ある色がどんな基本色名で呼ばれるかは言語によって異なります。それぞれの言語において、日常生活に必要な最も基本的な単位に分類したものを、基本色彩語と呼びます。

基本色彩語の上位3色、白・黒・赤

もっとも多くの言語において共通するのは白と黒を表す色名で、基本色彩語が3つの言語には、赤が加わります。日本語を初めとする大部分の言語には、青、黄、緑、灰色、茶色、ピンク、オレンジ、紫を加えた全11個の基本色彩語が存在します。

シャネルの黒とは?

chanel_noir1

シャネルが公開している「Inside CHANEL」では、シャネルの色として、基本色彩語の白、黒、赤に、ベージュとゴールドを加えた5色をあげています。そして、ココ・シャネルやカール・ラガーフェルドの言葉を引用しながら、それぞれの色のイメージを解説しています。
 


The Colors - Inside CHANEL

 
シャネルの黒は、「本質を際立たせる色」「オバジーヌ孤児院の制服のように厳粛な色」「女性の輝きを引き出す色」。シャネルというブランドにとって、黒が特別な色になったのは、1926年に発表した、リトルブラックドレスがきっかけです。制服や喪服の色だった黒は、リトルブラックドレスによって、エレガントな色へと変貌をとげました。ココ・シャネルが黒を押し通したのは、「すべてを支配する色」だから。そして黒は、「他の色に深みをもたらす色」だとも述べています。

真っ黒な黒の探求

chanel_noir2

ヨーロッパで黒が喪服の色となったのは16世紀頃、フランス王妃、アンヌ・ド・ブリュターニュが、黒い服を着て、喪に服したのがきっかけと言われます。しかし、当時の染色技術では、さまざまな染料を使って、布を黒くすることはできましたが、完璧な黒からは程遠いものだったようです。しかし、真っ黒な黒への需要が高まったことで、18世紀頃には、さまざまな色調の黒がつくられるようになりました。

シャネルの「ものづくり」と「ものがたり」

chanel_noir5

シャネルというブランドは、色のイメージを活用したブランディングが巧みです。ココ・シャネルが過ごした孤児院の制服に黒のルーツを求め、その一方で、リトルブラックドレスというスタイルを確立し、黒=喪服や制服という規範を覆しました。
 


CHANEL Coco Noir - The Film

 
「ものづくり」と「ものがたり」を相互に作用させる手法は、2012年に発売された、黒いボトルの新しい女性用フレグランス「COCO NOIR(ココ ヌワール)」においても発揮されています。シャネルの専属調香師ジャック ポルジュは、ココ・シャネルが旅したオリエンタルな街ヴェネチアからインスピレーションを得て、バロック的な夜の情景を感じさせる香りをつくりだしました。
 
 
参考
Inside CHANEL シャネルの色
Amazon.co.jp: Basic Color Terms: Their Universality and Evolution (The David Hume Series): Brent Berlin, Paul Kay

RELATED ARTICLES