『沈まぬ太陽』(山崎豊子)(新潮社)

『カリスマ』と共通しているのは実在の人物を題材としている点、『太陽の季節』とはタイトルつながりの本作。ベストセラーであり映画化もされているので、すでにご存知の方も多数と思います。日航機墜落事件からも来月で29年。個人的には、記憶に刻まれているニュース映像で最も古いのがこの事件です。


 

『白い巨塔』のファンだったこともあり山崎豊子作品はかなり読んでいますが、『沈まぬ太陽』は中でも長編のため、楽しめる時間も長く「ありがとう」と言いたくなります。十字架を背負って生きる、という主人公としての必要条件を満たしながら、昨今の小説の主人公にありがちな「心の弱さ」が微塵もない強靭な精神を持ち合わせた主人公・恩地の行く末にハラハラし、応援しながら一気に読み進めることができます。主人公たるもの、ヒーローであれ、という古めかしい考えを持つ僕には気持ちよくてたまらない話です。さらにそこへ『白い巨塔』ばりのドロドロとした人間模様が絡み合い、ストーリー自体を分厚くしている。

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映画も小説もまだ触れていない方は小説から入ることをオススメします。思い浮かべる登場人物の「顔」が、読む人によって他の小説よりもかなり差が出てくるであろうと思うからです。もちろん、映画はご覧になった方で小説を未読の方にもオススメします。つい先日亡くなった著者の取材力や、事実をフィクションへとしっかり昇華する力に改めて敬意を抱く一冊です。
 
 

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